研究概要 |
本研究は,伝統構法による木造五重塔の振動特性を定量的に明らかにすることを目的としている.本年度は,新築の伝統構法五重塔である三重県津市の津観音五重塔にて加速度計8台により地震観測を行い,2004年9月5日紀伊半島沖地震(M6.9),東海道沖地震(M7.4)の際の応答の測定に成功した.東海道沖地震では津観音は震度4,地動120galを記録した.測定結果に関する考察を行った結果,初層が大きく変形する2次モードが卓越することを明らかにした.更に,平成16年10月20には台風23号が紀伊半島を直撃した.その際には現地に赴き,台風時の振動を実測した.最大瞬間風速24m/sを記録した際の応答を計測し,微動時・中規模地震時・台風時の塔の動的特性を定量的に明らかにした.その結果,伝統構法木造五重塔の動的特性,固有振動数や減衰定数はその最大振幅に依存することを示した.これは,組物や接合部など,伝統的な木造建築の水平抵抗要素の幾何学的非線形性による効果であると考えられる.減衰に関してはバラツキが大きくより詳細な検討が必要であるが,変位依存性がありより大きな地震応答に対しては更に減衰定数が大きくなることが想定できる.更に,微動時の動的特性と地震時のそれを比較したところ,微動時の挙動は風による影響が強いため,地震時の挙動を推定するのは困難であることを示した.今後は要素の部分実験の結果を踏まえ,伝統的木造構法の非線形性と動的特性を定量的に検証する必要がある.
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