研究概要 |
平成16年度は、軸力だけが作用して局部座屈が発生する角形鋼管柱を対象として、その局部座屈後の耐力劣化挙動を精度よく表現できる局部座屈解析モデルの構築を試みた。この角形鋼管柱の局部座屈解析に用いた解析モデルには、既に提案している円形鋼管柱の局部座屈解析モデルに用いた弾塑性ヒンジと弾塑性直線材を適用した。本研究において提案した角形鋼管柱の局部座屈解析モデルを用いた解析結果により、以下の知見を得た。 1 軸圧縮力を受ける角形鋼管柱の最大耐力および最大耐力時の塑性変形量は、幅厚比が小さいものほど大きくなる傾向を示した。この傾向は、既往の実験結果と合致するものであり、本研究で提案した局部座屈解析モデルの一定の妥当性を示した。 2 局部座屈の長さをパラメータとした解析結果から、最大耐力を最小とする局部座屈長さは,角形鋼管の幅とほぼ等しい.この結果も,既往の研究による成果と一致している. 3 局部座屈部分の形状を決定する座屈波頂部の幅b0をパラメータにした解析では,最大耐力を最小とするb0の値を得ることはできなかった.従って,解析モデルの修正・検討,及び実験結果との比較によってb0の値を決定する必要がある. 4 角形鋼管の寸法と,素材の応力度と歪度の関係だけを与えれば、局部座屈による耐力劣化挙動を表現することが可能である。このため,既往の局部座屈解析において必要であった多くの実験結果に基づく劣化型の履歴特性を、本研究による解析モデルでは必要としない。 なお、平成16年度に角形鋼管柱の短柱圧縮試験と圧縮引張の繰返し実験を行い、実験結果と解析結果を比較する予定であったが、試験装置と試験体製作の遅れにより、予定していた実験が完了していない。早急に実験を完了し、実験結果と解析結果の比較を行って,解析モデルの検証を行う予定である。
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