1年目の今年は、まず粘弾塑性サスペンション要素法を用いて繊維補強コンクリートの解析が可能かどうか検討するために、解析の改良を行った。従来、解析における繊維の考慮として、節点間に繊維に相当する弾塑性要素を導入していたが、この弾塑性要素の考慮を動的にし、より現実の現象を正確に再現できるようにした。これにより、近辺のサスペンション要素が破壊されても、繊維要素を模擬した弾塑性要素が架橋することでコンクリートに靭性が付与される現象がより正確に再現できた。これは、繊維補強コンクリートの破壊解析として十分成立するものと考えられる。繊維の混入量はこの繊維要素の数によって表現でき、繊維の弾性係数および引張強度は、それらを解析に与える場合に変化させることで表現できる。また、繊維の長さも、繊維要素を作成する間隔を変化させることで対応できる。このように、繊維の影響を幅広く解析的に検討できる点に、本研究の意義がある。ただし、今回再現できたのは、主として直接引張試験についてであり、曲げ試験については、原因は不明であるが、現在では解析がうまくいっていない。 これと並行して、繊維の解析内での入力データを得るため、各繊維の強度、弾性係数、モルタルとの付着強度などの物性値を実験的に測定した。特に、繊維とモルタル間の付着強度は、繊維補強コンクリートにおいて架橋効果を発揮する場合に必要となる性質であり、繊維の物性値以上に重要な値であると考えられる。このため、実験治具を作成するとともに、各繊維について、表面の状態およびモルタルの強度など、付着強度に影響を与えると考えられる要因を変化させて実験を行い、解析の入力データとして使用できる値を計測した。
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