研究概要 |
高靭性繊維補強セメントを用いたフレーム構造の縮小模型試験体の振動台実験を行い、縮小模型によって実大実験が再現できるかについて検討した。比較の対象は1996年に防災科学技術研究所の大型耐震実験施設にて行われた実大3層1×1スパンの鉄筋コンクリート造骨組の振動台実験である。試験体は3体とし、縮小率を1/5,1/8,1/15に設定し、寸法を縮小率にあわせて縮小した。実大試験体の鉄筋比にあわせて配筋量を決定したが、主筋にはねじ鋼を用いた。せん断補強筋は用いない。試験体を縮小と、ベースシア係数が上昇し、周期が短くなる。ベースシア係数が増大する分、付加マスとして鋼製のおもりを載せ、入力波形の振幅を大きくすることとした。ただし、載せられる鋼製おもりの量が試験体の寸法により限定される。周期に関しては、実大との比にあわせて入力波形の時間刻みを縮小した。1/8試験体では、振幅を2.72倍、時間刻みを0.21倍とすることになった。加振は、八戸EW波(1968)を用いた1方向加振とした。実験結果では、縮小模型でも実大と同様、梁曲げ降伏先行の降伏機構を示したが、その後、軸力比の小さい縮小模型では1層柱脚部が引張破断した。縮小模型の応答変形角はいずれも実大の2倍程度であった。柱脚部の破断により耐力低下を生じたこと、速度が小さいことにより減衰も小さいことなどが要因として考えられる。 本研究では、高靭性繊維補強セメントを用いて製作したフレーム構造としては初めての振動台実験を行った。軸力比や減衰の問題により実大と比較して過大な変形角を生じるに至ったが、超小型模型による振動台実験の可能性を示せた。
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