研究概要 |
振動モニタリングに基づき実建物の振動特性の日変動を分析した。研究内容を以下の2項目に分けて述べる。 (1)建築物の固有振動数の日変動と制震補強効果による変動量の比較 段階的に制震補強が実施された10階SRC造建築物(電力中央研究所我孫子地区南研究棟本館)を対象として,常時微動記録に基づいて補強期間中における固有振動数の経時変化を分析した。制震補強は中間4層について下階から上階へと順に実施されており,設計値によれば常時微動時には補強後の層剛性が補強前と比べて12〜24パーセント増加する。一連の記録を互いに重複しないように15分の小サンプルデータに切り分け,各小サンプルデータにARMAMAモデルによる振動モード同定法を適用して,南北方向と東西方向の1次固有振動数を同定した。その結果,補強の進展につれて固有振動数が日変動を伴いながら増加していく様子を捉えることができた。補強工事前後の固有振動数の変化率を平均値で評価すると,東西方向で4.7パーセント,南北方向で7.2パーセントの増加となる。一方で,固有振動数の日変動は東西方向で3.0パーセント,南北方向で3.4パーセントであり,補強工事による増加率に比較して無視できない変動である。 (2)建築物の固有振動数の年間変動 上記項目(1)と同じ建物を対象として15ヶ月にわたる長期振動モニタリングを実施し,固有振動数の年間変動を考察した。モニタリングでは,建物の各階で常時微動を測定するとともに,最下階の柱と最上階の壁面で内外温度を測定した。その結果,固有振動数の日変動は年間を通じして発生しており,特に柱や壁の温度が日を追って上昇していく時期(5〜7月)に日変動の振幅が大きくなることを明らかにした。また,2004年10月新潟県中越地震や2005年2月16日茨城県南部地震などの小地震の前後では,固有振動数の日変動に変化が現れないことが判明した。
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