高齢者や障害者など様々な移動困難をもつ人に対する案内音は、様々な施設で実際に導入されている。しかしながら、現在のところ法的な整備までには至っておらず、案内の行われる場所やその場所での案内音について統一されていないため、設置場所の統一とともに標準化が望まれている。エスカレータ・エレベータ・トイレ・階段・出入口といった障害者や高齢者からの設置ニーズの高い主要な場所において、どのような"案内音による移動支援"を行えばよいかを考察することが本研究の目的である。 本年度は、具体的な案内音の選定、および、案内音発生装置の試作と評価を行った。 1.案内音を設置する必要性の高い実際の現場において背景騒音を調査した。具体的には、エレベータ前やエスカレータ前といった場所で背景騒音を記録した。周波数分析を行った結果、各ヶ所で測定した背景騒音の周波数スペクトルに差異は見られなかった。 2.案内音に対する聴き取りやすさ(背景騒音下でも聞き取れるとともに、注意を喚起できること)・音源方向定位(背景騒音下でも音源の位置がわかること)に着目し、防音室内で1.で記録した背景騒音を放射した上で音響心理実験を行った。案内音としてスープ音とポーン音を採用した。その波形には矩形波・正弦波などを用いた。 3.音響心理実験の結果から、背景騒音に応じた最も有効な案内音を選定した。 4.選定した案内音を発生できる「案内音発生装置」を試作した。 5.試作した案内音発生装置の有効性を確認した。
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