研究概要 |
平成17年度は,(1)既往研究の文献調査,(2)夏期ならびに冬期の実測調査を行った。また,文部科学省による「学校保健統計調査」結果に示されている,全国の児童におけるアレルギー性疾患の有病率増加への指摘,特に,秋田県での有病率の急激な増加を受け,(3)県内2500人の児童を対象としたアンケート調査を実施した。得られた知見を以下に示す。 1 住宅の湿度環境と健康影響に関する文献レビューを行い,(1)結露やカビの発生などDampnessに関連する問題が潜在していること,(2)カビやダニ等がアレルギー性疾患等と関連深いにも関わらず,それらの曝露状況と健康影響との関連について検討している例が少ないこと,等がわかった。 2 住宅のDampnessに起因する健康被害が見られる住宅を対象に事例調査を行った。ダニ量やカビ数の測定結果より,アレルギー性症状を指摘する住宅では,それらの量が多い居室が存在しており,湿気に起因する微生物的要素の影響も疑われる。さらに,検出されたカビを種類別に同定することにより,各住宅によってカビの構成が異なることが確認できた。これまでのカビ数の評価では,総量のみに着目されていたが,人体に有害なカビの存在を把握することも重要であることがわかった。 3 アンケート調査により,全体の約45%で何らかのアレルギー性症状を訴えている。これらの要因は,遺伝的因子の影響もあるが,結露,カビ,ダニに代表される湿気環境に関わる要因の影響が否定できず,統計的に有意な因子として認められた。 4 以上の知見より,Damp Buildingの発生メカニズムは事例毎に大きく異なっているが,ダニ・カビ等の微生物汚染による影響が小さくないことが把握できた。さらに,臨床的な観察を加味した事例調査によりさらに知見を蓄積し,健康影響に至った因果関係を明らかにしていく必要がある。
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