日射の直散分離は建築熱環境予測においては欠かせない手段であるが、現時点において実現象を忠実に再現することは難しく誤差を含んだ推定モデルが存在するにとどまっている。また現実には傾斜面日射量は直達日射量成分と拡散日射量成分の合成により求められているが、厳密な直達日射量成分を天空領域においてどこまで含めるかによって値そのものが変わってしまうという定義そのものに対しての問題をも含んでいる。また、直散分離の誤差を生み出している要因にどんなものがあり、その出現特性の地域性や時期変動を捉えることは重要である。本年度、本研究において、昨年から開始した詳細な日射の観測の継続と気象台観測の詳細気象データの統計的解析により、特に直散分離の誤差要因として放射輝度の分布やその不規則性、日射の短時間変動性に着目し、誤差との関連性を明らかにした。 また、気象データと建築との関連性から建物周囲の微気候の形成について、実測により検討を行った。その結果、日射の影響による建築外壁表面温度の上昇や風向により建物周囲の外気温度に差が生じる結果が得られた。建物における外気取入口、空調室外機の性能への影響が懸念される結果となった。
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