空調設備設計におけるパソコン利用の現状、デジタル設計のニーズなどを把握するため、東京都及び岐阜県の比較的小規模な個人設備設計事務所137社を対象にアンケート調査を実施し(回答数73社)、空調設備設計手法の実態を調査した。内容としては、事務所の規模、設計業務全体における打ち合わせ、書類作成、図面作成のそれぞれの割合、図面作成に用いるCADソフト、設計業務における最も非効率な点などである。結果としては、建築、構造、設備間でのデータ交換は依然として紙図面で交換されデータの読み取り、データの再入力、図面の修正に非常に多くの時間をとられる。また、デジタルでデータを交換する際でもソフトの互換性の問題により不具合を生じやすい。コンピュータは計算機としてや、図面作成のためのCADツールとして断片的にしか用いられておらずデータの連携や再利用といったデジタルの利点が十分には活かされていない。 調査データの分析結果を踏まえ、設計方法、評価指標と評価方法を検討した上で、デジタル設計のあり方を提示し、空調設備システムのデジタル設計手法を提案した。具体的には、DRA-CADのカスタマイズにより、設備図面においてダクト、配管など設備シンボルの図形パッケージに部品名、部材名、サイズ、抵抗係数など情報を与え、図面惰報のデータベース化ができた。また、CAD図面の外部に存在するWEB情報、各メーカーのカタログデータにより、設備寸法、価格、姿図を含む新たな空調設備のデータベースを提案した。空調機の姿図を確認して、設備のDXF CADデータ、機器情報、部材情報などをダウンロードして、DRA-CADで直接に利用することができた。さらに、DRA-CADで作成した設備図面と外部の空調設備データベースを繋ぎ、ダクトの抵抗計算、機器や配管の積算ができ、計算結果をExcelへの自動出力も実現した。
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