市街地整備の基本的な手法である土地区画整理事業はこれまで、その後の居住環境形成に資する事業計画構成を提示してこなかった。その背景には、居住環境形成の主体たる住民の参画が事業プロセスに乏しく、まして、事業後の居住環境管理までを住民が担うプログラムが用意されてこなかったからである。この問題意識から平成16年度(平成16年10月)より、その事業後の居住環境管理までを実現するシステムの構築を行うことを目的とした本研究にとりくんでいる。 本年度(平成17年4月〜18年3月)は昨年度に引き続き、土地区画整理事業施行地区における居住環境管理の概念定義を行うため、関係する図書・資料の収集・検討を行った。昨年度は区画整理促進機構の事業データベース『区画整理年報』を入手したが、本年度はその情報を元にした事例抽出のための分析作業を進めた。特に千葉県・埼玉県といった首都圏郊外において居住環境管理のとりくみが見られるが、その理由について本年度は地域あるいは事業特性を加味した検討を行った。 そして昨年度に引き続き実態を正確に知るため、居住環境管理をめぐる調査票調査の企画を行った。その実施を本年度は予定したが、首都圏を含む大都市圏での問題構成についてなお検討した上で最終的な調査設計を実施した方がよいと考え、新年度前半に実施ができるよう準備を進めた。その一環として行った事例研究としては、既成市街地での住民による事業改善の試みである兵庫県神戸市湊川1・2丁目地区、逆に事業に反対した住民の論理から区画整理を考える事例として神奈川県藤沢市辻堂南部や栃木県足利市大日西地区などでの分析を進めた。 以上をふまえ、土地区画整理事業のその後に対する住民参画のあり方をモデル化することが新年度の目標となる。そのための網羅的な調査の準備や個別事例研究の蓄積を本年度は進めたので、新年度にその展開を図りたい。
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