阪神・淡路大震災における消火活動の苦い経験から、自然水利等の活用を含めた消防水利の多元化が必要となる一方、消防車や消防隊による消火活動だけでなく、地域住民による初期消火や、災害直後に必要となる応急生活用水にまで対応できるように、環境整備を行うことが重要となることが明らかとなった。 本研究では、非常時に活用できる水利のうち、上水道以外の地域の自然水利等に着目し、これらを防災に活かす目的で整備を行った各地の実績について、水利種別に代表的事例の実態調査を行い、その事業プロセスの特徴を明らかにすること、さらに市民側の視点から整備に対する評価や日常の水利活用状況、防災意識の調査を行うことで、「環境防災水利」のあるべき事業プロセスとその指針について、知見の抽出を行うことを目的とした。 平成17年度の研究実績としては、特に応急生活用水に着目し、主として兵庫県南部地震時の事例から、行政・市民双方の応急生活用水確保に対する活動の実態について整理し、その特徴及び課題点、および法・規則内容を整理した。さらに京都市での対策に関して、市関係部署(上下水道局・消防局・教育委員会)へのヒアリングを通じて、対策の現状の詳細を明らかにし、神戸市の対策との比較を行った。 一方、応急生活用水対策の市民の現状を把握するために、市民が自主的な防災への取り組みを行っている京都市右京区の御室学区及び同学区の北内畑町を対象とし、アンケート及び災害図上訓練活動を通じて調査を行った。 以上の調査により得られた知見から課題点を整理し、行政と市民(個人・地域)に対して、応急生活用水の確保へ向けた水利環境計画の方針の整理を行い、北畑町を対象として提案方針の具体化を試み、応急生活用水確保のための整備計画案を提案した。
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