本研究の目的は、歴史的町並み保存地区における空き屋問題を解決することにある。そこでは、深刻さを増す伝建地区の空き屋化問題を学術的に解析するとともに、我が国の町並み保存事業において、活用できる提言を目指す。 本年度は、我が国の歴史的町並み保存地区における空きや発生要因を把握するべく、集中的に現地調査を行い、事情の把握につとめた。また識者へのインタビューを行い、研究課題のフレームを明確にした。 面的保存地区の空き屋事情を行うために複数地点の伝統的建造部群保存地区の現地調査を行った。これらについては、空き屋発生の動向を把握し、また選定した地点については保存事業の関連者へのインタビューを行った。 また空き屋化現象は町並み保存地区だけに起こるのではなく、また災害脆弱性などの複合的な要因を把握する必要があるとの識者のコメントに従い、一般文化財の利用や活用、また防災対策の事情についても把握を行った。 これら現地調査では、文化財や保存地区内だけではなく、広く周辺市街地の空洞化の状況も把握を行った。あわせて、歴史的遺産の保全についてアジア諸国の事情に精通する研究者を我が国に招き、現地視察を行うとともに討議を行った。 現在、全国の町並み保存地区における空き家化状況については数値データを解析中である。次年度についてはこれらの数値データを分析するとともに、収集した文化財保護関連および都市計画関連の資料を精査して、表記の課題に関する考察をおこなうものである。
|