1.研究の課題の一つである用途複合化における「再生利用の検討ロセスの解明」について分析・考察を行った。特に、再生利用事例の内、旧用途の割合が最も大きい学校建築を対象とした。 2.文部科学省が平成15年に公表した「廃校活用状況調査」によると九州圏内で廃校の相対的に多い県は、福岡、熊本、長崎、大分であった。そこでまず、予備的考察として熊本県を対象に廃校利用の実態を調査した。その結果、大都市、過疎地域ともに廃校が発生しており、また、平成7年以降から廃校の増加に伴う利活用が検討されていることが分かった。利活用によって継続使用する要因は財政的要因及び住民の要求の2つであることを確認した。さらに、平成4〜15年度の廃校事例80校の内、23事例、29%が用途複合化の事例であることを示した。 3.熊本県の8つの廃校事例に調査済みのアンケートから福岡県及び大分県の5つの事例を加えた、合計13の事例を対象にインタビュー調査によって再生利用プロセスを考察した。その結果、新用途の決定要因においても継続使用要因と同様に、制度面と住民要求の両面があり、その主要因によって検討プロセスも行政主導型と住民協働型に分化されることを指摘した。また、用途複合化は、これらの要因と新旧用途の必要面積の不整合性という複合的な要因によって決定されていることを示した。 4.学校建築の再生利用の成功事例では、住民の組織が検討プロセスに加わるだけでなく、施設の管理運営と利用プログラムにも主体的に関わっていることを明らかにした。このことから、用途複合化では、継続利用及び新用途検討段階に加えて、管理運営までの一体的な検討体制の構築が不可欠であることを示し、一連の検討プロセスを再生用マネージメントとして、その検討体制と検討事項を整理した。
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