1.公共建築物の再生利用事例の実績と用途複合化の実態を把握するため、2005年10月に九州圏の人口50万人未満の342市町村を対象としてアンケート調査を実施した。その結果、152の市町村より有効回答を得、89の再生利用事例を明らかにした。 2.89の再生利用事例の内、用途複合化事例と多目的用途事例を抽出するとともに、アンケートによって自治体が有効な再生利用と判断している事例を考慮し、6つの事例の選定した。これらが有効な再生利用事例である理由は、(1)制度上及び管理運営面でスムーズに再生利用できたというストック管理に対する評価、(2)新用途の意義と利用後の評価、以上の2つに区分され、特に用途複合化事例では後者が評価される傾向にあることを明らかにした。 3.再生利用事例の計画プロセスを明らかにするため、幼稚園から子供の健全育成施設に再生された大分県の事例に注目し、関係者へのインタビュー調査と利用実態の観察調査を実施した。この再生利用は大分県独自の制度に基づき多目的な「こどもルーム」を整備した事例で、再生利用の先進事例と位置づけられる。 4.「こどもルーム」の再生利用プロセスは、(1)間借りでの試行的利用段階、(2)再生利用後の専有利用段階、(3)改築及び改修による空間改変後の固定利用段階、以上の3つの段階を経て利用が定常化していることを明らかにした。さらに、このような再生利用プロセスは、当初の利用構想から柔軟な変更を可能としており、「こどもルーム」では利用対象と室用途の利用後変更が確認できた。 5.利用観察調査によって、再生利用事例が有効に利用される要因は3つの計画段階に応じたつくり込み型の空間改変であることを実証した。具体的には試行的利用段階から継続的に専門家が関わり、用途が変動状態と固定状態の判断が重要であることを指摘した。
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