本研究では、外部との交流により都市的生活様式をもつ人々を集落社会に取り込んでいくことは積極的な評価ができると捉える。こうしたことが、過疎問題と環境管理問題が複合化した状況を解決する糸口になる可能性があるのではないだろうか。 本研究では、家族社会や集落社会に着目し、地域間を移動する人間(集団)を取込むことで集落を存続し、集落環境の利用管理を続けていくための潜在的可能性を検証するとともに、その実現のための条件整理を行うことを目的とする。 本年度は、兵庫県家島諸島に属する坊勢島を対象地に選定し、調査研究活動をおこなってきた。 坊勢島は、全国でも珍しく、人口が増加しつづている離島である。昭和45年以降からほぼ継続的に人口が増加しつづていており、この30年間でほぼ約700人も増加している。人口動態をみると、社会増減はほぼ一定で量で転入・転出を繰り返しているのに対して、自然増減は出生数が死亡数を大きく上回っており、自然増で人口増加をしている離島であると位置づけられる。 集落環境の中でも.今回の調査では、共同空間に着目し、井戸、集会所、広場(遊び場)、祭りなどに関する場所が、どのように空間的に変遷し、また利用管理がどのように変化したのかについて明らかにした。人口増加により、港湾整備、道路整備が集落の周辺部で急激に進められたことにより、集落の中心部にあった多機能的、複合的に利用されてきた共同空間は、利用されなくなり、単機能的な新たな公共施設が利用されるようになってきたことが明らかになった。
|