本年度は、昨年度に引き続き、兵庫県飾磨郡家島町に属する人口増加を続けてきた坊勢島に着目し研究を行ってきた。 特に、「新宅わけ」という息子が結婚し世帯を構えるときに新宅を与えるという慣行があり、このような住宅条件と人口増加との関係性があるのではないかと仮説を設定し、結婚による世帯分離や転居を中心に、坊勢島での実態を把握した。 「新宅分け」がどのように行われているかを知るため、過去25年の住宅地図で各5年間隔に、1度でも記載変更があった場所の件数を数えてみた。すると、5年間で200件前後の記載事項の変更が継続して行われていることがわかった。このことから、島全体で住宅資産の流動性がかなり高く、「新宅分け」に限らず、島内での転居が多く行われていると考えられる。 次に、旧集落地域と新興市街地地域を対象としてアンケート調査を行い島民の転居歴について把握した。旧集落地域で約半数、新興市街地で9割が少なくとも島内で1度は転居していることがわかった。その主な理由として世帯主の結婚、子どもの成長、世帯主の隠居があげられ、ライフステージに合わせて、島内で転居をして確保する実態が明らかになった。 さらに、島内における住宅および宅地のやり取りの経緯を把握するためにヒアリング調査を行った。家族・親戚や知り合い、仕事仲間の間で、無償提供および売買がおこなわれ、島全体として住宅資産を融通し合う実態が明らかになった。
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