本研究の目的は、これまで十分な研究蓄積のなかった、戦前昭和期、つまり法定都市計画策定期最初の地方中小都市のプランニングに焦点をあて、そのコンセプトやプランの特色を、多数同時に対象事例を比較しながら明らかにすることである。調査対象とした中小都市は、戦前の六大都市を除いたもので、大正期までに都市計画法が適用になった43市である。科研費助成の2年間における研究実績は以下のものがある。 1.研究対象とした43市全てにおいて、都市計画区域決定、街路計画決定、公園計画決定、地域指定決定の各々の文書・理由書、図面を全て収集し整理した。 2.当時の計画策定機関の主幹部であった各都市計画地方委員会に関して、その議事録(特に重要会議部分)を幅広く収集・整理した。 3.設立時から敗戦までの期間における各都市計画地方委員会事務局職員の在籍表を作成した。 4.都市計画区域の指定方法やその際の計画思想を、対象43市を比較しながら明らかにした。その成果は、「旧都市計画法による最初期の都市計画区域指定に見る計画技術・思想とその実際に関する研究 〜大正期迄に旧都市計画法が適用された中小都市43市を対象として〜」(日本建築学会計画系論文集595号、pp.125〜132(2005年9月))で発表した。 5.街路計画の立案パターン、つまり規模、形式、都市骨格の形成法といった要点部の特色を、対象43市を比較しながら明らかにした。その成果は、「旧都市計画法による初期街路計画の立案とその特色に関する研究 〜大正期迄に旧都市計画法が適用された中小都市43市を対象として〜」(日本建築学会計画系論文集603号、掲載頁未定(2006年6月))で発表される。 6.1.で述べた、収集図面を基に、一部都市ではGISを用い、電子データとしての図面ストックを開始した。 以上である。
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