新出史料『白鳥方歴代記』(以下『歴代記』)を発見することができた。この史料の価値比定を行ったのち、同史料を手掛かりとすることで、近世の白鳥御材木場の活動状況を軸にして、建築材料としての木材に着目して研究を行った。『歴代記』の内容は、慶長五年から明治八年(1875)にわたる、白鳥御材木場の事跡について書かれたもので、御材木奉行の構成員の変遷、業務の詳細などが年次ごとに記されている。明治人年以降にそれ以前の日次記のような記録史料を手がかりに纏めたか、あるいは写して成ったものと思われる。白鳥御材木場の事柄のみならず、幕府・藩の徳川家関係の記録が、時には朱書きで、詳細に記されているのも特徴的である。筆者や年代を示すものは記されていないが、現在の研究成果から確認できる事項内容については齟齬が無いなどの検証を、類例史料から検討することで、『歴代記』が史料的に信頼のおけるものであることを明らかにした。また、この史料を用いることで、設立時から幕末にかけての「白鳥御材木場」の構成について、既往研究を補完しうる詳細な様相を明らかに出来た。さらに、近世初期の木曽材の木材需給について、江戸城御台所、出雲大社正殿の寛文七年遷宮用材といった、具体的な建築名がわかるものに関して、研究することが出来た。江戸城御台所用材は、きわめて長大なケヤキ材が必要とされたこと、出雲大社正殿遷宮用材などは、一度江戸の甲良家へ送り検分したことなどを明らかにすることが出来、木曽材の調達状況の一部を知ることが出来た。また、御材木奉行が兼任から専任に移行する課程も詳しく検討する手掛かりを得ることが出来た。 これらの結果、白鳥御材木場の構成、および、具体的な建築用材の動きに関して、既往研究を補強しうる成果を得ることが出来たとともに、木曽材の調達状況が公需優先であったことを再検証することができた。
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