アーメダバードにおけるル・コルビュジエの建築制作の全体像の見取り図を把握した前年度の成果に基づき、本年度はとくに、アーメダバードのサラバイ邸Villa Sarabhaiの制作過程について詳細な分析を試み、ル・コルビュジエにおける敷地環境の解釈、既得の建築語彙のアーメダバードへの適応法などの一端を明らかにし、建築意匠論的な手法による環境デザイン論の構築を試みた。さらにサラバイ邸と類似する建築形式であるパリのジャウル邸Maisons Jaoul邸の分析を試み、敷地の異なる二つの制作過程を比較検討することによって、インドにおける建築制作の特殊性、およびル・コルビュジエの建築制作における普遍性について考察した。 また、ル・コルビュジエの建築語彙として「屋根」に加えて「壁」に着目し、その環境デザイン的な分析を試みた。「屋根」は2類型に分類できるのに対して、「壁」に関しては5類型(「水平横長窓」「ガラス壁」「ロジア」「ビリーズ・ソレイユ」「クラウストラ」)に分類でき、全制作過程を分析した結果、ル・コルビュジエの後期建築制作においては、「壁」の透明化と非透明化が両義的にデザインされることが明らかになった。 一方、インドにおける伝統建築のル・コルビュジエの受容、デザインへの影響に関しては、アーメダバードだけではなく、チャンディガールを含めて分析を進め、フランスを中心とした建築制作とインドにおける建築制作の差異への影響について、調査を進めている。
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