研究概要 |
本研究は,戦前期に日本の委任統治領であった南洋群島において,主として日本人によってなされた建築活動の全容を明らかにしようとするものである。本年度の実績の概要は,以下の通りである。 (1)現地調査 8月に,パラオ共和国での現地調査(14泊15日)を行った。まず,これまでの調査の成果を基に作成していた日本委任統治時代の建築物の残存状況を示す地図をほぼ完成させることができた。この地図は,今後の研究の進展の基礎資料として非常に有用であると考えられる。また,旧海軍電信通信所(現在は,資源開発省土地測量局などのオフィスとして使用)ほかの残存する建築物や基礎の実測調査を行い,平面図や立面図などを作製した。これらの図面も,今後の研究の進展のために非常に重要な基礎資料となると考えられる。 (2)資料収集 防衛庁防衛研究所史料閲覧室,外務省外交史料館,アジア会館アジア太平洋資料室,琉球大学附属図書館,九州大学附属図書館などを訪問し,旧南洋群島における建築物に関する資料を,特に写真資料を中心に収集した。特に,パラオ共和国に残存する日本委任統治時代の建築物に関する新たな事実が多数確認されたが,未だ全ての建築物の詳細が明らかになった訳ではなく,更なる検討が必要である。 (3)意見交換 太平洋学会第13回研究発表会や琉球大学移民研究センター第4回セミナーなどで,これまでの研究成果を発表すると共に,意見交換を行った。 (4)その他 当初,訪問する予定であったハワイ大学ハミルトン図書館が平成16年秋に鉄砲水の被害に遭ったため,ハワイを訪問することを平成16年度は見送った。そのため,被害を受けなかった部署に所蔵されていたマイクロフィルムの複製を入手することとし,研究の遅れを少しでも取り戻すことに努めた。なお,ハミルトン図書館を含めたハワイ大学への訪問は,平成17年度の課題である。
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