前年度までの実験結果等において比較的良好な特性を示したGeを添加したZn酸化物薄膜に対し、スパッタガス中への水素ガス導入による成膜時プロチウム導入実験を行った。 スパッタガス中の水素ガス割合を0〜0.2の範囲に設定し、種々の成膜条件下で薄膜堆積試験を実施した。 薄膜試料の結晶構造は成膜時の基板温度に依存して、六方晶ウルツァイト型ZnO(002)と(103)方向への配向が見られた、ガス中の水素濃度の増加に伴い、特定方位のピーク強度は全体的に低下する傾向がみられた。 水素ガス比率が0.03程度までは電気抵抗率の低下が確認され、ガス比率0の試料にくらべて最大で2桁以上の変化が見られた。ホール測定により求めたキャリア密度はこの範囲で上昇しており、電気特性の向上はキャリア密度の上昇によるものと考えられる。一方、水素ガス割合が0.05以上では、水素ガス割合の上昇に伴い、電気抵抗率は増大した。 透過率は、電気伝導性の向上が見られた水素割合0.03以下を含む0.1以下の領域においては、どの試料も可視域で約80%以上であり、十分な透明性を示した。一部の試料では高濃度(0.15%以上)において透過率が著しく劣化した。これら高濃度の水素割合における特性の劣化は、成膜プロセスにおいて過剰の水素の存在により還元作用が生じた事が原因として考えられる。なお、他の酸化物薄膜および水素導入法と同様に、水素導入量の増加に対応して薄膜試料の光学バンドギャップエネルギーが増大する現象が確認された。 以上、スパッタガス中への水素ガス混合による水素導入処理は、Ge添加Zn酸化物薄膜の透明性を保ちつつ電気伝導性を向上させるに有効であると考えられる。
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