研究課題
本研究グループでは、100万Gレベルの強い遠心加速度場(超重力場)を高温で長時間発生することのできる超遠心機を開発し、強い重力場下の合金や化合物等の原子の沈降や分子・結晶化学の研究を進めている。これまでの研究で超重力場下における固体中の構成原子(置換型原子)の沈降現象は一般的な拡散よりも速い拡散となっていることが分かっている。本研究では、原子の沈降およびそれに伴う分解反応を確認した金属間化合物Bi_3Pb_7について、組成変化がほとんど起きない温度条件下で超重力処理を施し(120℃、90.5万G、100h)、陽電子消滅寿命を測定した。その結果、重力処理後の試料ではほとんど濃度変化が起きていないにもかかわらず、陽電子平均寿命が延びていることが分かった(出発試料:199ps、超重力場処理後:210ps)。平均寿命を延ばしたのは300psの寿命を持つ欠陥成分であり、複空孔等によるものであると考えられることが分かった。超重力場下で原子の沈降が起こる際に、空孔が導入され、点欠陥として結晶内に留まっていると考えられる。先に述べたように固体中の構成原子の沈降現象は一般的な拡散よりも速い拡散となっていることは分かっているが、そのメカニズムについてはまだ分かっていない。この原子の沈降メカニズムとして、空孔が絡んだ高速な拡散機構、準格子間型機構、これらの組み合わせを示唆する結果である。沈降メカニズムの解明に向けて今後より詳しく調べる予定である。
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Proceedings of the 1^<st> International Conference on Diffusion in Solids and Liquids "DSL-2005" Vol.2
ページ: 531-534
ページ: 467-470