研究概要 |
種々の電子・光学セラミック薄膜をSiウエファ上に堆積させ,優れたデバイス特性を引き出すためのジルコニアバッファ層について検討した.特に,i容量-電圧(C-V)特性におけるヒステリシス解消,ii界面準位密度低減,iiiリーク電流の低減を実現するため.申請者らはジルコニアバッファ層の非晶質化を目指した.まず,PLD法によってp-Si(001)ウエファ上に室温成膜した非晶質YSZ(8mol%Y2O3ドープ),非晶質YTaSZ(8mol%Y2O3-Ta2O5混合ドープ)バッファ層を堆積し,透過型電子顕微鏡中で高温その場断面TEM観察法によって結晶化温度をリアルタイムで評価したところ,YSZバッファ層は約300℃で結晶化が開始したのに対し,YTaSZバッファ層は580℃以上で初めて結晶化が起こった.つまり,Taのドープによって結晶化温度が約280℃も向上したことになる.Taはイオン半径が小さすぎるためジルコニア結晶に大きな歪みをもたらすため,本来ジルコニア結晶中に安定には固溶できないのであるが,Yと共存しYとTaが周期的に固溶するために強く歪んだ正方晶の結晶構造をとる.よって,この様な固溶元素によって結晶に導入される歪みが大きい程,結晶化のための活性化エネルギーが増大し,高温での非晶質ジルコニアの安定性が増大することが明らかになった.本成果より,Yをさらに大きな希土類元素,Laで置換することでさらに格子歪みが増大し,結晶化温度の更なる向上が期待される.次年度は,この方針に基づいてLa-Ta混合ドープジルコニアバッファ層について検討し,結晶化温度上昇の観点から組成や成膜条件の最適化を行う.
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