研究概要 |
次世代のSi-CMOSデバイスのためにはSiO2に代わる高誘電率ゲート絶縁膜の開発が急務である.本研究では,ZrO_2を組成改質することによって,優れた非晶質高温安定性の実現について検討した.イオンビームスパッタリング法によってp-Si(001)ウエハー上に室温成膜した非晶質ZrO2,非晶質LaTaSZ(30〜70mol%La_2O_3-Ta_2O_5混合ドープ)非晶質LaTaO_4薄膜を堆積し,赤外線ランプアニール炉で大気中400-1000℃で60秒間急速加熱処理を行った.各処理温度での薄膜ナノ構造を高分解能透過型電子顕微鏡で評価したところ,以下の事実が明らかとなった.無添加のZrO_2薄膜は,400-500℃の間で結晶化が起こり,非晶質層の高温耐熱性が低いことを示している.30mol%La_2O_3-Ta_2O_5混合ドープの場合,700-800℃まで分相化せずに均質な非晶質相を維持できた.800℃以上で結晶化が起こり,多結晶化した.50mol%La_2O_3-Ta_2O_5混合ドープの場合,900℃まで非晶質相を維持できたが,700℃以上において非晶質のままTaの偏析が起こり,数nmの粒子が析出した.70mol%La_2O_3-Ta_2O_5混合ドープの場合,700℃まで均質な非晶質相を維持できたが,800℃以上で相分離あるいはボイドの発生が起こった.LaTaO_4薄膜では,相分離温度,結晶化温度共に更に低下した.X線回折分析の結果,ドープ量が50mol%未満ではZrO2ベースの固溶体,50mol%以上ではYTaO4ベースの固溶体になっており,ちょうど50mol%付近では両者の混合相が結晶化することが明らかになった.以上の結果は,La_2O_3-Ta_2O_5混合ドープ量が30-50mol%付近にLa-Ta-Zr-O系非晶質ゲート絶縁膜の最適組成の存在を示唆している.
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