研究概要 |
ZrO_2の組成改質により優れた非晶質高温安定性の実現についてゲート絶縁膜の材料選択に当たって結合のイオン性の観点に基づき,低誘電率のSiO_2やAl_2O_3を用いない高誘電率非晶質ゲート絶縁膜実現を目指すために,ZrO_2-Ta_2O_5系非晶質薄膜の高温安定性について検討した.RTA処理による代表的な組織変化をTa0at%(ZrO_2),Ta10at%, Ta20at%, Ta30at%, Ta40at%, Ta50at%に対して行い,結晶化の有無を組成に対してプロットした状態図を作成した.この状態図より以下のことが明らかとなった.(1)ZrO_2の結晶化温は500℃以下であった.(2)Taの固溶によって結晶化温度を最高で900℃まで向上可能であった(50at%).(3)Ta40at%以上でZrSiOに匹敵する800℃という高温安定性を示すことが明らかとなった.この結晶化温度の組成依存性を考えるため,固溶体における結合のイオン性を検討する.一般に,非晶質酸化物は結合のイオン性,より本質的には酸素の配位数に応じて3つのグループに分類できる.共有性の強いCRN型構造では3次元ネットワーク構造を持ちSiO_2に代表される最も安定な非晶質構造である.しかし,イオン分極の寄与が小さく誘電率が小さいという欠点を持っている.一方,多くの高誘電率材料はイオン性が強くRCPと呼ばれる非晶質構造を持つが,誘電率が高いものの非晶質安定性が低いという問題を抱えている.つまり両者はトレードオフの関係にある.そこで両者の中間の構造であるMCRN型構造と呼ばれるグループが注目されてきた.この構造は結合のイオン性が47-67%,Oの配位数2-3で特徴づけられる.ZrO_2-Ta_2O_5系で約39at%以上の組成に対し結合のイオン性が67%未満となりMCRN構造になると考えられる.よってTa_2O_5の固溶によってZrO_2はMCRN型構造の非晶質となり,ZrO_2単相よりも高い非晶質安定性が得られたと考えられる.
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