本年度は、ナノカーボンを強化材としたポリマー系コンパウンドの作製とその基礎物性の評価を行った。ナノカーボンとしては、気相成長(CVD)法により作製したカップスタック型カーボンナノチューブ(CSCNT)を用いた。CSCNTは通常のカーボンナノチューブ(CNT)と異なり、繊維側面に構造的な凹凸を有するため母材との接着性に優れ、かつ繊維径が80nm、繊維長が100μm程度であるため、マイクロマシン等の微小部品に優れた物性を与える強化材料となる可能性がある。母材としては成形が容易で広く使用されているポリプロピレン(PP)を使用した。 コンパウンドの作製にあたり、二軸混連機によりCSCNTを熱溶融したPPに混練し、混練時の型温、時間、CSCNTの許容充填量等の最適条件を実験的に評価した。 CSCNTの充填量を変化させて混練したCSCNT/PPコンパウンドをペレット化し、ホットプレス成形法と射出成形法によりいくつかの規格試験片を作製した。それらの試験片を用いて熱的および機械的特性の評価を行った結果、CSCNT/PPの特性はCSCNT充填量に比例して向上し、またコンパウンドの成形条件によって最適化できることがわかった。特に射出成形時の樹脂流動によりCSCNTの配向を制御することで、コンパウンドの物性が大きく変化することが明らかとなった。またCSCNTを強化材とすることで非常に微小な試験片を成形することができ、優れた物性を示すことも確認できた。さらにサンドイッチ射出成形法によりCSCNT/PPの同心円筒状積層材を作製し物性を評価したところ、積層構成を適切に制御することで、より少量のCSCNT充填量で高い物性を持つ積層材を作製できることがわかった。次年度は他の母材との複合、機械要素やマイクロアクチュエータの作製および性能評価を行う。
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