研究概要 |
平成16年度は、研究実施計画に従って、以下の三項目の研究を行った。 (1)Ni-M-Zr(M=Ti, Hf)三元系急冷凝固アモルファス合金膜を作製した。TiおよびHfはZrと同族元素である。これらの急冷凝固薄帯を作製し、膜両面にPdを被覆した後、水素透過性を調べた。その結果、Ni-Ti-Zr合金では水素透過係数が10^<-8>[mol・m^<-1>・s^<-1>・Pa^<-1/2>]台の比較的高い値を示したが、Ni-Nb-Zr合金には若干及ばなかった。また、Ni-Hf-Zr合金に関しては、透過係数はNi-Nb-Zr合金よりもおよそ1桁低い結果であった。 (2)実効流量を稼ぐため、アモルファス合金薄帯(約40μm)をより薄膜化するべく、スパッタ法による薄膜作製を試みた。その結果、約500℃での基板加熱でもアモルファス膜が得られた。支持基板にはガラス基板、アルミナ多孔質板、テフロン膜を使用した。しかしながら、約1μmの膜厚では支持基板上の孔を完全に被覆することが出来なかったので、約10μmの膜厚としてNi-Nb-Zrスパッタ膜を作製することが出来た。Ni,Nb,Zrの各元素によるスパッタレートの違いから、ターゲット組成の最適化・調整が必要であることが分かった。 (3)アモルファス形成能の観点から、Ni-M-Zr(M=Nb,Ti,Hf,V,Ta,Y,Mo,Sc,La)の混合エンタルピーおよび原子寸法比の比較を行った。その結果、混合エンタルピーの比較から最もアモルファス形成能が高いのはHf次にTi,Scと思われるが、この考察結果は必ずしも水素透過測定結果と一致しなかった。すなわち、水素透過膜の合金設計と急冷凝固アモルファス薄帯作製の合金設計は必ずしも一致しないことが分かった。従って、水素透過性と急冷凝固アモルファス成形性のための合金設計を今後最適化する必要があることが分かった。
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