研究概要 |
ワイヤー素子形状の抵抗率を測定するときに、電極と素子間に発生する接触抵抗の影響が無視できない。平成16年度は、ワイヤー素子の端部にバルク部を残し、ナノ粒子を用いた銀ペーストで測定したが、明確な抵抗率を測定するためには、ワイヤーすべての端部が金属部と接続され、良好な電気接続が行われる必要があった。このため本年度は、ワイヤー端部の面にイオンプレーティング法によりTi(100nm)/Cu(1,000nm)の電極層を形成し、その後、銅電極と接続する方法を試みた。その結果、バルク素子で得られたものと同等の抵抗率となり、300K~25Kまでの温度領域で、その温度依存性が完全に一致した。これより、ワイヤー素子の抵抗率を評価することが可能となった。 磁場中で熱電素子の性能を向上すべく、本年度は直径10~50μm,長さ1mm程度のBi製ワイヤーをガラスで束ねたマイクロワイヤー素子を用いて、熱電性能(ゼーベック係数,抵抗率)の測定を行った。磁場中では素子のアスペクト比が大きいほどゼーベック係数の改善率が高く、また抵抗率の上昇率が低いことが報告されていた。しかしながら、これらの報告はバルク素子を用いての結果であり、アスペクト比が10以上を持ったマイクロワイヤー素子では、その挙動は不明であった。先に述べた電極接続技術を用いて磁場中でのゼーベック係数を測定したところ、期待通り、アスペクト比の大きな素子では同じ磁場強度でもその改善率が高く、また磁場中での抵抗率の上昇率も抑制することができることが確認された。 その他、キャリアの散乱プロセスを決定するために、ネルンスト係数測定装置のセットアップを行った。はじめはホールプローブを用いて変調磁場下で、それに対応する電圧が測定できるかなどの検討を行った。
|