研究概要 |
本研究では,高誘電率酸化膜とSiの界面としてHfO_2/SiとY_2O_3/Siの2つの系を比較しながら,界面反応機構と反応経路の検討を進めている。前者は界面でSiの酸化が見られ,後者はシリケート化反応が見られる例である。本年度は2つの系の界面反応の定量化を試みた。 HfO_2/Si系について酸素雰囲気中で熱処理し,界面酸化により成長するSiO_2層の厚さを調べたところ,初期酸化は急速だが,その後緩やかに進行する飽和型の挙動を示すことが明らかになった。またO^<18>同位体ガス中でのアニール後の同位体プロファイルからHfO_2層中の酸素の移動過程は極めて迅速であり律速過程とはならないこと,さらにSiの面方位を変えても酸化速度が等しいことが分かった。これらの実験事実を基に,気相中の酸素分子がHfO_2中では分子から原子状に変化して界面に到達して急速な酸化をもたらす一方,SiO_2層が界面に成長すると共にSiO_2層中での原子状酸素の失活が起こって界面に到達しなくなるために酸化が緩やかになるというモデルを構築した。このことはHfO_2層が2nm以下の極薄領域では,Si表面酸化の挙動と類似してくることと矛盾しない。 一方,Y_2O_3/Si系で同様の実験を行ったところ,シリケート化反応に加えて界面酸化反応が同時進行することが明らかとなった。このことは,O^<18>同位体ガスによって予めSi表面を酸化しておき,この上にY_2O_3を堆積して1000℃熱処理した後の同位体プロファイルを調べると,O^<18>はY_2O_3中へ均一に拡散する一方で下地に残ったSiO_2中にO^<16>が多量に含まれることからも示唆された。この界面酸化の反応量については,HfO_2/Si系の場合を発展させ,原子状酸素が失活する層としてシリケートとSiO_2の双方を考慮したモデルを仮定すると定量的に説明できる。次年度はさらに反応経路を明確化する予定である。
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