| 研究概要 |
自動車用アルミニウム合金として利用されているAl-Mg系,Al-Mg-Si系合金について,引張変形を与えた場合の材料中の局所的な水素の集積挙動を水素マイクロプリント法により可視化する実験を行った。まず高純度原料地金を用いて溶解雰囲気を大気とアルゴンの2種類で変化させて,材料中の水素量をコントロールしたAl-5%Mg合金を作製した。この内在水素量の違いによって,室温での延性が低下することが明らかとなり,同時に最終破断位置での水素の集積が内在水素量の多い試料ほど顕著になることが示された。局所的な水素の集積については,引張変形量が20%を超えた場合に,すべり帯と粒界に優先的に集積することが明らかとなった。またこの粒界への水素の集積では,粒界性格によって顕著な集積が認められる場合と認められない場合とがあることが判った。粒界性格の違いによる粒界への水素の集積の違いの原因を明らかにすることを目的として,SEM/EBSP法を用いて予め試験前に板状試験片の平行部の粒界方位を調べておき,試験後に水素の優先集積がみられる粒界の性格を評価する検討を行った。その結果,引張軸に対して傾きを持ったねじれ粒界と傾角粒界で水素の集積が顕著となることが明らかになった。この一連の結果を日本金属学会に発表した論文は2004年の日本金属学会論文賞として評価された。Al-Mg-Si合金については,Si量を変化させた5種類のAl-Mg-Si合金を作製し,平成16年度科学研究費補助金により購入した低ひずみ速度引張試験機(SERT-MINI)を用いて,試験環境の水蒸気から取り込まれる水素の影響を調査した。その結果,室温での試験においては,ひずみ速度を10^<-7>s^<-1>と低速で行った場合,通常の10^<-4>s^<-1>程度の試験と比べて,伸びが大幅に低下することが明らかになった。次に環境から取り込まれる水素の影響を明確にする為に,試験環境の相対湿度を90%に保持しながら同様の検討を行ったところ,環境脆化の挙動が時効条件によって変化することが明らかになった。
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