研究課題
本研究は、使用時の繊維強化ポリマー(FRP)の強度を著しく劣化させる要因である強化繊維とマトリックス間の界面剥離を材料自体が自己修復し、優れた強度を長期間維持するインテリジェントFRPを開発するための基礎的検討を行ったものである。昨年度は、自己修復性を有するエポキシ樹脂およびFRPを作製して引張試験を行い、強度回復に及ぼす微細カプセル含有量の影響を詳細に検討した。本年度は、昨年度の検討結果を踏まえ、新たな実験および解析を行った。得られた成果を要約すると以下の通りである。1.異なる平均粒径(100〜500μm)の修復剤入り微細カプセルと硬化触媒を混合した自己修復性を有するエポキシ樹脂(自己修復エポキシ樹脂)を対象に、引張試験を行った。初期の引張強度は、微細カプセルの平均粒径200〜500μmではほぼ一定の値を示したが、平均粒径100μmで低下した。また、修復後の引張強度は、微細カプセルの平均粒径の増大に伴い増大する傾向を示した。2.室温における自己修復エポキシ樹脂の強度回復の可能性を検証するため、破壊後の試験片を30℃の恒温槽内で修復させて、修復後の引張強度と時間の関係について検討した。室温で24時間後、80℃で24時間修復させた結果と比較すると、30℃でも10日以上修復させると同程度の強度回復が得られた。3.異なる平均粒径の微細カプセルを有する自己修復エポキシ樹脂を強化繊維表面に塗布して、自己修復界面を有するFRPを作製した。このFRPを対象に、繊維と垂直方向の引張試験を行った結果、初期の引張強度はばらつきが大きく、極端に初期の引張強度の低い試験片は修復しない傾向があることが明らかとなった。4.微細カプセルの設計指針を得るため、自己修復エポキシ樹脂中のき裂進展挙動に関する有限要素解析を行い、き裂進展経路と微細カプセルの粒径・配置との関連性について考察した。
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Plastics, Rubber and Composites : Macromolecular Engineering 35・2
ページ: 67-72
日本機械学会2005年度年次大会講演論文集 1
ページ: 397-398