研究概要 |
液体急冷凝固結晶制御装置を用いて種々の組成の強磁性CoNiGa薄帯(厚さ40〜60μm)を作製し,変態温度測定,組織観察,磁気特性評価などを実施した.CoNiGa薄帯のマルテンサイト(M)変態及び逆変態温度は,同組成のバルク材のそれよりも高い値が得られたが,それは急冷凝固薄帯に導入された圧縮残留応力のためと考察した.薄帯の磁気特性には異方性が認められ,磁場印加方向θ(試料長手方向を回転軸とし,幅方向と磁場印加方向のなす角.θ=90°のとき磁場印加方向と厚さ方向が平行)が約70°のとき保磁力が最大(130Oe)となり,それはバルク材の約3.5倍程度であった.室温近傍でのTEM観察では,変態双晶を含む板状のマルテンサイト晶とストリークを伴う制限視野電子回折図形が観察できた.また,一部の残留オーステナイト領域にはM変態前駆現象を示す典型的なtweedコントラストを観察することができた.薄帯断面のSEM及びTEM観察では,M晶が薄帯表面に対して約70°の角度で生成していることが確認できた.この角度が保磁力の磁場印加方向依存性に影響していると考えた.本課題では,薄帯をエポキシ樹脂等で積層化したマイクロアクチュエータの開発とその評価を最終目標としているので,積層化手法についても予備的実験を行った.その結果,二種以上の純金属繊維を混合し加圧しながら適当温度で熱処理することで金属間化合物が得られ,Ti繊維とNi繊維を用いた場合にはTiNi形状記憶合金が得られることを見出し,特許を出願するにいたった.
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