研究概要 |
液体急冷凝固結晶制御装置を用いて種々の組成の強磁性CoNiGa合金薄帯(厚さ40〜60μm)を作製し,磁気特性の磁場印加方向に及ぼす影響を金属組織学的に検討するとともに,双晶磁歪に大きな役割を演じるマルテンサイト晶のキャラクタリゼーションを行った.薄帯のT-L断面及びT-W断面(T:厚さ方向,L:長さ方向,W:幅方向)の電子顕微鏡観察で,板状のマルテンサイト晶が薄帯表面に対して約70°の角度で生成していることが確認できた.また,X線回折法による極図形の測定によってもこれを裏付ける結果が得られたので,マルテンサイト晶の生成角度が磁気特性の磁場印加方向依存性に影響していると考察できた.透過電子顕微鏡の明視野像と制限視野電子回折図形から,マルテンサイト晶内には{220}を双晶面とする微細な双晶があることが明らかになった.また,母相とマルテンサイト相が共存している領域の観察から,それらの結晶方位関係と晶癖面を決定した.マルテンサイト晶の制限視野電子回折図形に得られた菊池線を利用して格子定数を求めたところ,斜方晶系であることが明らかになった.同一の結晶粒内で異なる方向に生成したマルテンサイト晶が交差した領域も明視野像として観察することができた.交差部では,双晶に起因した筋上コントラストが消失しており,交差部の境界は非常に鮮明であった.すなわち,非熱弾性型マルテンサイト変態する合金のみで報告されている熱誘起したマルテンサイト晶のdetwinning現象が,熱弾性型マルテンサイト変態する本合金で観察されたことになる.液体急冷凝固法で得られた本材料の特有の現象か否かは現時点では不明であるが,双晶の性質は磁歪に大きく影響するので,detwinning現象の発現機構を詳細に調査する必要があることが明白となった.
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