1.大気環境での曝露試験:炭素鋼試験片(SPCC-D)を屋外環境下の曝露試験架台に設置し、全く同じ条件下に置かれたACMセンサ出力および百葉箱に設置した温湿度センサ出力をモニタしながら大気曝露試験を行った。曝露期間は1箇月のものを交換しながら通年、さらには2箇月、3箇月、6箇月、1年の試験片も並行して曝露し、腐食量をACMセンサ出力とともに整理した。これにより炭素鋼の大気腐食における表面に生成したさびの影響が、曝露地によらずあるひとつの傾向を示すという知見が得られた。 また、平成16年9月からは試験片の鋼種を増やし、耐候性鋼および亜鉛めっき鋼についても調査を開始した。また、同じ大気環境でも降雨の影響を受けない覆いつき曝露架台も用いて、包括的な曝露試験を行っている。 2.実験室的曝露試験:恒温恒湿槽で行った腐食試験結果と、試験時に表面に形成されている水膜の厚さ(後で述べるデータ解釈から得られるもの)との間に見られる関係を整理し、大気腐食における腐食速度のピークは過去に報告されているモデルよりもかなり水膜が厚い側にあることを見出した。 また、センサによる腐食性評価が難しい雨がかりのある環境について、実験室系において降雨環境を再現する準備をすすめた。 3.基礎データの取得と実験データの解釈:熱力学計算で得られる水膜の塩分濃度と水の活量(相対湿度に対応)の関係や溶液の密度を用いて、大気腐食の研究で課題となる材料表面に形成されている水膜の性状についてまとめた。またACMセンサ出力と、水膜の性状との対応付けを行った結果、直接的な測定の難しい水膜の厚さや付着海塩量の連続的な導出の可能性を見出し、さらに腐食性の評価へと歩を進めている。
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