TIGまたはレーザ溶接の溶接速度を向上させるためにレーザ+TIGのハイブリット溶接装置を開発し、溶接速度1m/min以上の速度で10mmのステンレス鋼を安定に1パス溶接することを目標とした。 装置の溶接特性を調査するため、レーザ出力、アーク電流、溶接速度、レーザと電極との間隔、溶接部のギャップの大きさを変化させて溶接し、溶込み深さやビード幅を測定した。その結果、溶込み深さと溶接可能なギャップ限界はレーザ溶接単独時よりも向上した。また、溶接速度は1m/min以上でもTIGの放電が確認され、TIG溶接単独の場合に比べても溶接速度は格段に向上できることが確認された。 なお、装置の最大出力(レーザ;4kW、TIG;300A)を用いた場合でも溶接速度1m/minで10mmの溶込みは得られなかったので、溶込み深さの期待できるMIG溶接とレーザとのハイブリットによって、1m/minで10mmの溶込みを狙えるよう装置を改造した。今後レーザ+MIGの溶接特性を検討する必要がある。また、レーザのテーブル制御機器がTIGの発する高周波によってダメージを受けることが確認され、ダメージを緩和するパーツや制御機器の交換を行った。 更に、ハイブリット溶接時のプラズマの挙動を高速度カメラで観察したところ、TIGのアークがレーザ照射部に寄っていく様子が見られたが、溶接中はナークの形状が安定ではなかった。溶接挙動を明確にするには今後、溶融池の挙動などを更に観察する必要がある。 なお、本年度は溶接特性等の基礎的部分の検討を中心に行い、装置の問題点を解決することが中心だったので、学術発表および特許の取得はなかった。
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