研究概要 |
本研究では、塗布光分解法を用いてBITエピタキシャル強誘電体薄膜の低温成長法の開発を行うとともに成長機構やレーザ照射の効果をについて調べた。 1.原料溶液の調整とキャラクタリゼーション 各種金属有機化合物を用いて原料溶液を作製し、溶解度や安定性の点から最適な原料溶液を決定した。原料溶液の紫外吸収スペクトルを測定し,レーザ光侵入長を求めた結果、193nmの吸収層は50nm程度であることが分かった。また、シリコン基板上の原料膜にレーザを照射し分解反応を調べ照射エネルギ、ショット数、繰り返し数と光分解反応の関係を明らかにした。 2.塗布光分解法によるエピタキシャルBIT膜の作製 STO基板上の膜に室温および300℃の基板温度で、照射繰り返し数、レーザフルエンス、レーザ波長をパラメータに、エピタキシャルBIT膜の作製を検討した。膜の成長には、加熱温度やレーザ波長および基板の選択が重要であることがわかり、STO基板上に室温、大気中のレーザ照射により、C軸配向膜の作製に成功した。 3.TEMによるエピタキシャル膜成長機構の解明 断面TEM観察を行ったところ膜厚が厚い場合は、深さ方向に膜の結晶性が異なるのに対して、膜厚が薄い場合、均一な膜が成長することが分かった。また、得られた膜は、基板に対しエピタキシャル成長していることも明らかとなった。 4.表面構造制御 AFMを用いて表面形状を観察した結果、照射法により表面形状の制御が可能であること見出した。 5.熱平衡反応によるBIT膜の作製 塗布光分解法との比較を行うため塗布熱分解法によりSTO, LAO, MgO基板上にBIT膜の作製を行った。その結果、800℃、30分の焼成でC軸配向膜が得られ、結晶性は、STO基板上の膜が最も高く、次いでLAO基板上の膜となった。また、極点図形測定を行ったところエピタキシャル成長していることが明らかになった。
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