研究概要 |
Cuナノ粒子の融解のシミュレーションを分子動力学法(MD)により行った。ユニットセルは,(111)と(100)を表面とする直径3〜50nmの6種類のナノCu粒子とした。温度一定のアンサンブル(NTV)を用いてMD計算を行い,各温度におけるCuナノ粒子のエンタルピーを求めた。その結果,温度上昇とともにエンタルピーは連続的に増加し,融解にともない,エンタルピーは不連続な増加を示した。このエンタルピーが不連続に変化する温度が融点であると考えられる。いずれのナノ粒子の融点も,実際のCuの融点よりも低く,さらに,粒径が小さいほど融点は低くなった。この序列は,表面を考慮した場合の熱力学から説明できる。つまり,粒径が小さいほど,比表面積が大きくなるため,1原子あたりのエンタルピーが上昇し,低温で融解にいたる。また,表面を考慮した熱力学では,ナノ粒子の融点は粒径に反比例すると示されるが,本研究の結果では,融点と粒径の逆数は,直線関係を示さなかった。従来の熱力学では,面方位の影響は考慮されていないが,実際は,面方位により表面エネルギーが異なることが影響していると考えられる。つまり,融解のエンタルピーが面方位によって異なっている可能性がある。したがって,熱力学をナノ粒子系に適用するためには,表面の面方位や各面の面積比の影響も考慮する必要がある。今後は,他の面方位を表面とする粒子についても計算を行い,上記についてさらに検討する。
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