研究概要 |
風洞出口において速度分布が一様な気流を作り,その流れの中に気流を部分的に遮る物体として極薄の平板を設置し、その後流域に乱れを発生させた。この乱れ領域内の空間局所の気流の乱れ特性と熱伝達特性の関係を明らかにするために,次のような測定を行った。先ず,申請の微小流速測定装置および熱線流速計を用いて,後流域の速度分布と空間局所の速度変動を測定した。また,別途作成した微小発熱体を熱伝達係数測定用プローブとして用い,速度変動を測定した位置と同じ箇所での熱伝達特性を測定した。なお,微小発熱体には,サーミスタをヒーターとして封入した直径5mmのベアリング球を用いた。ただし,発熱体が微小なため,サーミスタのリード線からの放熱が無視できないので,次のような工夫をした。すなわち,上記の微小発熱体プローブとは別個に,あえてもう一対のリード線をベアリング球に接続した,いわゆるダミーのリード線つきプローブを作製し,双方のプローブを交互に同一測定箇所に設置して表面温度が等しい条件下で測定を行った。次いで,ダミーの無いプローブの放熱量とダミーつきプローブの放熱量の差からリード線からの熱損失分を求め,金属球自体からの正味の放熱量を求めた。 上述のように測定した物体後流域の空間局所の熱伝達係数と気流の速度変動の関係を検討したところ,物体後流域のデッドスペース(物体の背後の領域)を除く領域では,発熱体に吹き当たる気流の実流速の増加と共に熱伝達係数の増加が見られ,一様気流中における金属球からの熱伝達よりも電熱促進が見込まれることを確認した。さらに,デッドスペースの外縁付近では気流の速度変動が著しく大きくなり,これに伴って熱伝達係数が一様気流中における値よりも数十%ほど増大することがわかった。 今後は更なるデータの蓄積を図ると共に,速度変動の度合いと熱伝達係数の増加割合の定量的把握を試みる。また,後流域の気流の乱れの様子の可視化も試み,乱れのスケールなどに検討を加える予定である。
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