平成17年度は、超音波霧化によるエタノール水溶液の濃縮メカニズムの考察にあたり、分離に及ぼす蒸発の寄与を検討した。超音波霧化のもとで蒸発に関与する代表的な3つの液表面すなわち液滴、音響流による噴水、バルク液面からの蒸発をモデル化した。それぞれ、強く乱れたガスと静止した液体、強く乱れた液体へのガス吹き付け、静止した液体面に平行な気流、という状態で、エタノール水溶液からの蒸発実験を行い、強く乱れた液からは水に比較してエタノールが優先的に蒸発した。これより、音響流による噴水部でエタノールが優先的に気相に移動していることがわかった。ただし、エタノールの濃縮に対して最も寄与が大きいと考えられる、エタノールに富む液滴生成の機構は未解明である。 平成16年度には、バイオディーゼル製造工程において生成するエマルジョン溶液に、2.4MHzの超音波を照射することで油水分離が促進する現象を報告した。平成17年度はこの現象を定量的に調査し、エマルジョンの油水分離促進の最適条件を探ることを目的として検討を行った。この検討に先立ち、所定組成の界面活性剤を含む油/水系を用いて、相分離度を評価する手法を確立した。超音波照射により相分離が促進され、分離度は振動子への投入電力の増大につれて大きくなるとともに、溶液体積の減少に伴って増加した。従って、溶液単位体積あたりに投入されるエネルギーが大きいほど分離が促進された。この系では振動子の駆動による発熱にともなう温度上昇では分離が起こらず、媒体と密度が異なる粒子が懸濁した溶液中の音の伝播により粒子に働く音響放射圧で液滴の凝集と合一が促進されたものと考察した。この分離効果を増大するための音場設計が今後の課題である。
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