研究概要 |
金属資源の有効利用に関して、各種金属の分離・回収は、金属産出量の乏しい我が国にとって重要な課題である。本研究の目的は、光機能性の抽出剤を合成し、金属イオン抽出を光照射により制御しようとするものである。具体的には、数種類のアゾベンゼン誘導体を合成し、その化合物の金属イオン抽出特性について検討する。アゾベンゼン誘導体は典型的な光異性化化合物であり、シス/トランス異性化にともなう構造変化により抽出能が大きく変わることが予想される。抽出反応を光スイッチにより制御することができれば、新しい抽出プロセスとなりうるとともに基礎研究の面からも非常に興味深い。 まず本年度は、光異性化能をもつ典型的な化合物であるアゾベンゼンの類縁体である、アゾピリジンを合成した。1-アミノピリジン5.0gを蒸留水100mlに溶解させ、有効塩素濃度5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液300ml中へ氷浴中で5〜10℃に保ちながら45分かけ滴下し、1時間反応させた。生成物をクロロホルムで抽出し、カラムクロマトグラフィーにより1,1'-アゾピリジンを分離した。同様にして、2,2'-アゾピリジン、3,3'-アゾピリジンもそれぞれ合成した。 これらの化合物はトランス体として得られたので、次にこれらに様々な波長の紫外光および可視光を照射し、シス体への異性化を試みた。3種類の紫外透過・可視吸収フィルター(UV-D33S、UV-D35、UV-D36C)を用いて紫外光を照射したところ、どれもシス体のみにすることはできなかった。しかし、1時間以上紫外線を照射することにより、シス体リッチな条件を得ることができた。次年度以降、これらの条件下で各種金属イオンとの錯形成について検討する予定である。
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