モレキュラーインプリンティングにとってターゲット分子と相互作用する機能性素子が重要な役割を果たすことをこれまでの基礎的研究で明らかとしている。したがって、ターゲット分子(光学活性物質)を高選択的に認識し、かつ電場に応答するのに最適な強誘電性を有する分子認識素子(強誘電性液晶モノマー)の設計および合成が最重要課題となる。そこで具体的に、分子認識素子の合成を行った。ここで合成するモノマーに要求される分子構造上の必要条件とは、電場に極めて鋭敏に応答し、相転移するようなメソゲン基(芳香環をエステル結合でつないだもの)を取り入れることであった。また、モノマー末端にキラリティーを導入することにより、光学活性物質のキラリティーとジアステレオメリックに相互作用し、特異的な認識を可能にする"キラルチャンネルの形成"を狙った。さらに、強誘電性を有する分子認識素子の設計合成に際しては、積極的に分子軌道法(MO法)を取り入れ、効果的な分子認識材料に最適な素子の開発に役立てた。強誘電性液晶モノマーそのものの電場応答の基礎物性(分子配向性等)や他のモノマーと共重合させた場合の高分子マトリクスにおける液晶分子の自己組織化が電場によりどのような挙動をしめすのかも併せて調査した。
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