研究概要 |
超音波キャビティを利用した有害物質の分解について、本年度は以下に示す3つの観点から研究を行った。 1.具体的な有害物質の超音波分解についてのデータ収集 有害物質は、環境省が発表した内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)と疑われる65物質の中から、ビスフェノールA、2,4-ジクロロフェノール、p-tert-ブチルフェノール、ベンゾフェノンの4種類の物質を対象とした。周波数500kHzの収束振動子を用い、電力約120Wで液中に超音波を照射し、前者3物質については初期濃度50mg/L、ベンゾフェノンについては飽和濃度38mg/Lを、すべて5時間以内に分解できた。分解速度は物質によって異なり、超音波分解の有効性が物質の種類に依存することが示唆された。 2.ビスフェノールAの超音波分解に及ぼす溶存気体の効果 ビスフェノールAについて種々の溶存気体を用いて実験し、その分解速度が、窒素<空気<アルゴン<酸素の順に速くなることがわかった。窒素は他の気体に比べて著しく分解が遅く、酸素と空気では特有の中間生成物が発現した。中間生成物の構造をガククロマトグラム質量分析計によって同定し、酸素の存在によって反応経路が変わることを示した。よって、超音波分解に及ぼす溶存気体の効果が、キャビテーション気泡内の到達温度という物理的効果と、気泡内生成化学種が反応経路に影響する化学的効果の両方が存在することを明らかにした。 3.超音波分解と電気分解、光照射下電気分解との比較 超音波分解と電気分解、光照射下電気分解との分解速度の比較を行った。また、超音波照射と他手法を同時に行うことを検討した。すべての場合で、超音波と電気分解を同時に行う超音波電気分解法が最速であった。しかし、各分解法の速度や、超音波を重畳したときの速度増加率は、物質の種類に大きく依存し、反応機構を解明する上での貴重なデータを得た。
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