研究概要 |
まず、in situ赤外吸収分光法を用いてハーフメタル強磁性体(La,Sr)MnO_3(LSMO)のMOCVD実プロセス条件下で反応容器内で起こっている化学反応の解析を行った。具体的には、気相中のLa,Mn,Sr原料分子由来の振動スペクトルの基板温度依存性を測定した。反応容器内に個々の原料を単独に供給した場合と、複数の原料を同時に供給した場合とを比較し、気相中での異種原料分子間の相互作用あるいは化学反応を調べたところ、SrのMOCVD原料はLa,MnのMOCVD原料とは熱安定性・反応性が大きく異なった。よって、各々のMOCVD原料供給量をやみくもに調整することにより所望の元素組成の薄膜を得ることは困難であることがわかった。 このようにして得られた気相反応に関する基礎データを踏まえて、ストイキオメトリックな元素組成を得るためのプロセス条件を探った。特に、LSMOの薄膜作製において、Laに対するSrのドープ量を正確に制御することを念頭に置いて研究を進めた。その場赤外吸収分光法により得られたデータを駆使することにより、MOCVDによりSi基板上に作製したLSMO薄膜のSrドープ量制御の指針を得ることができた。得られた薄膜は、酸素雰囲気下でのアニール処理により、結晶性が向上し、抵抗率の減少とともに絶縁体-金属転移を確認することができた。さらに、MOCVDにより作製したLSMO多結晶薄膜について、低磁場下において大きな磁気抵抗効果を発現することを観測した。
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