研究課題
シリカ化合物MCM-41(以下M41)はナノサイズの均一な細孔構造と高い比表面積(1000m^2/g)をもつ。すでに昨年度までの検討によりこのシリカ化合物は不純物(例えばアルミニウム)によらない酸性質を有すること、超強酸性が必要とされるカルボン酸を有効に活性化できることなどを明らかにしている。平成18年度はこのM41に担持した銅イオンの触媒特性を種々の有機合成反応に応用した。1)不斉シクロプロパン化反応テンプレートイオン交換法により調製したCu-M41存在下、ジアゾ酢酸エステルとスチレンのシクロプロパン生成反応が速やかに進行すること、銅量の1.5当量のビスオキサゾリンを加えると、生成物に70%程度の不斉誘起が観測されることを見出した。錯体触媒固定化法による不均一系不斉シクロプロパン化反応は多数報告されているが、本反応系のように固体表面上の活性点を非共有結合的に不斉修飾するタイプの不斉触媒系は前例がない。活性種が溶液相に溶出していないこと、不斉固体触媒として再使用できることから、反応が不斉固体触媒上で進行していることが明らかである。2)多置換環状エーテル類の効率的合成銅担持シリカナノ多孔体を触媒とすると、ジアゾ化合物とカルボニル化合物から発生する活性イリド中間体の分子内環化によりエポキシドが、活性イリド中間体と電子不足アルケン類との[3+2]環化付加反応によりフランが得られることを見出した。フラン合成反応の場合、均一系銅触媒による既往の例では加熱条件が必要とされており、実際にCu(OTf)_2を本検討で用いたフラン合成反応条件に適用しても生成物は得られない。またナノ細孔構造を持たない市販のシリカゲルに銅を担持しても同等の活性を得ることができない。これらの結果はシリカナノ多孔体自身と銅がフラン合成に有効な活性点を形成したことを示している。
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Abstracts of Papers, 232^<nd> ACS National Meeting
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