研究概要 |
懸濁液を流動させた状態で担体表面にバイオフィルムを形成させる直方体のアクリル製チャンバーを作製した。このチャンバーには顕微鏡用カバーガラスを取り付けた観察用小窓が設けてあり,限界流速以内であれば液漏れがない状態で顕微鏡観察が可能であった。現時点では担体を移動させることが出来ず高倍率でのバイオフィルム観察は達成されていないが,担体表面および観察用小窓の距離を可動にすることで高倍率のバイオフィルム観察が可能となる。 また,菌体内エステラーゼ活性を有するものを生菌と定義することで,蛍光色素(6-carboxyfluorescein diacetate ; CFDA)および核酸染色剤(4',6-diamidino-2-phenylindole ; DAPI)を用いた生菌率評価方法を確立した。前処理としてグルタルアルデヒド1g/Lを作用させることで,純粋系(グラム陽性菌,グラム陰性菌)および活性汚泥に代表される複合微生物群の生存率を適切に評価することが可能となった。本手法により,対数増殖期における純粋菌および曝気槽内の活性汚泥中の微生物群の生存率はそれぞれ,90%以上,60%程度であることが明らかとなった。今後,CFDAとDAPIを用い,担体表面に付着したバイオフィルム中の菌体の生存率の経時変化あるいは環境条件による生存率への影響などに応用できると考えられる。 さらに,厚み方向のバイオフィルム内溶存酸素(DO)濃度分布を測定するため,ガラスキャピラリーを用いてクラーク型の微小DO電極を作製した。応答の良い電極を用いた場合,0.1-0.2mg/Lの精度で溶液中のDO濃度を測定することが可能であった。
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