本研究はトリの卵管を生きたバイオリアクターとして用い、卵白タンパク質の約80%に相当するオボアルブミンのプロモーターにより生産を行うための技術開発を目指している。本年度は染色体に組み込まれた状態でのプロモーター活性を検討するアッセイ系の構築を試みた。孵化直後のヒナをホルモン処理することにより、胚のホルモン処理に比べはっきりとした卵管形成が確認できた。卵管組織のタンパク質を解析したところ、産卵メスの卵管と同程度の量のオボアルブミンの存在が確認できた。このことから、ヒナを処理することでアッセイ系を構築することとした。まず、オボアルブミンの上流約3kbをプロモーターとしてつないだレトロウイルスベクターコンストラクトを作製し、高いタイターでウイルスベクターを生産できるパッケージング細胞を樹立した。現在、作製したベクターを胚に注入し、遺伝子導入個体を作製中である。胚の孵化後アッセイ系の妥当性を確認する予定である。 オボアルブミンプロモーター中のNRE領域に関して、ゲルシフトアッセイを用い結合因子の解析を行った。配列の類似性から、NRE領域内部のサイレンサーエレメントにポリコームタンパク質の一種YY1タンパク質が結合することを想定した。ヒトYY1を用いた解析によりサイレンサーエレメントとYY1が結合することが明らかとなった。YY1のニワトリ相同体のクローニングを試み、DNA結合ドメインを含むC末端領域を得た。DNA結合ドメインのアミノ酸配列はヒトYY1と同一であった。その後報告された配列をもとに、現在全長をクローニングしている。
|