研究概要 |
本研究課題では,プロテオリポソームを,従来の研究用ツールだけでなく人工臓器などに対して工業的に利用してくための基盤的知見を獲得することを目的としている.しかしながら,従来のプロテオリポソームの調製法,安定性,操作性には克服しなければならない問題点があるのも事実である.そこで,平成16年度では,(プロテオ)リポソームの特性解析に基づき,操作条件下での(プロテオ)リポソームの機能評価と担体への固定化が原理的に可能であることを見出した.平成17年度は,(プロテオ)リポソーム膜上に種々の酵素(断片)を提示することで当該機能をリポソームに付与することを目的とした.さらに,固定化リポソームカラムの薬物排出能を検討し,人工臓器への応用の可能性について基礎的検討を行った. 検出用分子素子を封入したリポソームを用いたセンサシステムにより,熱,pH,酸化ストレス条件下におけるタンパク質・リポソームの特性/相互作用解析を統一的に進めることが出来ることを示した.この知見に基づき,脂質膜・(モデル)生体膜のストレス応答ダイナミクス((脂質)膜界面ダイナミクス)に立脚したリポソーム材料調製・機能発現・ストレス有効利用型プロセスの設計を目指した新領域「メンブレン・ストレスバイオテクノロジー」を提案している.例えば,酸化ストレス消去系酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(断片)をリポソーム膜上に提示し,酸化ストレス消去能をリポソームに付与することに成功した.さらに,高周波誘電分散解析(周波数範囲1M-30GHz)などの手法を用いて,膜の水和状態の変化,ならびに,変性タンパク質や膜タンパク質の脂質膜への導入過程をモニタリングし,(プロテオ)リポソーム調製への指針を得ている.プロテオリポソームの固定化条件を最適化して得られる固定化リポソームクロマトグラフィーは,長期間安定に使用可能であり,人工臓器の操作条件(37℃)での安定した薬物排出能を発揮することが確認された.
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