高度な異常検知・故障診断法の開発は、絶対的な安全性・信頼性を求められる宇宙システム研究において、最重要な課題の一つである。本研究の目的は、宇宙機運用データから故障診断知識を自動獲得し、事前専門家知識との融合によって網羅的かつ高精度な異常検知・診断を行ない、さらに暗黙的専門家知識を事後獲得することによって診断性能を改善する方法を確立することである。 本研究の第二年度であり最終年度でもある平成17年度は、前年度の研究成果を発展させ、主に以下の3つの研究を行った。 1.カーネル特徴空間を利用したテレメトリデータからの異常検知法の開発 超多次元の衛星テレメトリデータから異常な兆候を自動的に検知する新たな方法として、カーネル主成分分析と呼ばれる技術を応用し、システムの挙動の変化を非線形特徴空間における主軸の変化として捕捉する技術を開発した。 2.DBNを利用した専門家知識と運用データの融合による異常検知・診断法の開発 確率的推論手法であるDBN(動的ベイジアンネットワーク)を応用し、事前に得られるシステムモデルやルールなどの専門家知識と実運用から得られるテレメトリを融合して検知・診断モデルを構成する技術を開発した。 3.変化点検知に基づく多次元テレメトリ情報の可視化法の開発 運用技術者が超多次元時系列データである衛星テレメトリから疑わしい挙動を発見することを支援する新たなデータ可視化法として、忘却型自己回帰モデルを利用した変化点検知法に基づく技術を開発した。
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