本研究課題「液体ロケットエンジン内超臨界水素・酸素気液二相流の数値解析」を進めていく上での大きな課題としては、気液二相流を扱うこと、および状態方程式等に実在流体効果を取り入れることの二点が挙げられる。一点目の難しさは気液界面の大きな密度勾配を安定かつ数値拡散なく計算しなければならない点にあるが、この点については近年注目されているCIP-CUP法を採用することで解決可能と考え、CIP-CUP法を基にした気液二相流解析コードを開発した。CIP法は原始変数の他にそれらの微係数を独立変数として扱うことにその特徴を有し、また、CUP法により音波に起因した圧力変動の伝播を陰的に解くことで、低速流れから高速流れまで統一的に扱うことを可能としている。これを用いて、二次元軸対称流れにおける液体ジェットの分裂過程などの基本的な気液二相流れを通じて解析コードの妥当性等を評価しているところである。液体ジェットは入口での擾乱の周期や振幅と表面張力との兼ね合いによって、擾乱が成長し液柱が分裂するか減衰し安定なジェットとなるかが決まるが、新たに開発した解析コードによってもこれらのことを確認した。二点目の実在流体効果の取り込みは、液体ロケットエンジン内という特殊な環境下では理想気体として扱うことが妥当ではない低温・高圧条件を扱わなければならないことに起因しているが、先に述べたCIP-CUP法がセミラグランジュ形式の部分段階法の一種であることから、状態方程式等熱力学的性質を厳密に扱うことも可能である。数多く提案されている状態方程式の中で、演算負荷等を考慮し実際解析コードに取り入れる式を調査中である。
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