研究概要 |
溶融法により作られたRE-Ba-Cu-O(REは希土類元素)高温超電導バルクは高いピン止め効果を得ることができる.近年になって実用段階に入りつつある高温超電導バルク磁石を、東京海洋大学等と共同で開発を進めている舶用超電導同期モータや、他の産業機器へ組み込み、効率よく使用するためには、静磁場着磁よりもパルス着磁が適している。しかし、静磁場着磁と比べて、パルス着磁によって得られる最大捕捉磁束密度は小さく、磁場分布が不均一に歪みやすく、総磁束も小さい。パルス磁場による超電導体への着磁特性の向上が求められていることから、本研究は外部印加パルス波形を適切に制御することによってバルクの磁気特性を静磁場着磁法並に向上させることを目的としている。 本研究では、従来の鋭いピークを持つパルス磁場(RLCパルス磁場)と異なり、最大磁束密度を占める時間が長い台形状のパルス磁場(台形パルス磁場)と、侵入磁束の運動を抑えることを意図して、連続的なスイッチングによって見かけ上のライズタイムが長く緩やかとなったパルス磁場(スイッチング制御パルス磁場)による着磁を試み、その磁気特性を比較した。試料には溶融成長法で作られた直径60mm、厚さ19mmのGd-Ba-Cu-O(GdBa_2Cu_3O_<6.9>70.9wt%,Gd_2BaCuO_519.2wt%,Ag9.4wt%,Pt0.5wt%)高温超電導バルクを準備した。現在東京海洋大学等との共同研究で開発中の高温超電導モータ内部での電機子配置と同様に、1.3mHの渦巻型多層円筒ソレノイドコイル2個によってバルクを着磁した。 台形パルス磁場による着磁では、RLCパルス磁場の結果と比べて磁気特性が悪化した。これは長時間にわたる高磁場領域の維持による恩恵よりも、磁場の侵入による温度上昇効果が大きかったためではないかと考えられる。一方、スイッチング制御パルス磁場による着磁では、今回の実験条件においてRLCパルス磁場と同程度の磁気分布が得られ、最大捕捉磁束密度と総磁束の値が140%以上増加し、バルクに捕捉した磁気特性の大幅な向上を実現した。
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